ユネスコスクール支援内容
1.長野県山ノ内町立南小学校ESD研修会
今年も12月初旬に山ノ内町立南小学校・西小学校のESD研修会に参加した。今年で4回目である。1日目は南小学校で、全学年のESDの取組を拝見した。信州大学教職大学院の学生、奈良教育大学教職大学院の学生もオンラインで参加し、南小学校での取組を中心に、意見交流を行った。地域の方の支援をいただきながらの2年生のリンゴ栽培5年生の稲作・雪白舞など、地域の特色を生かした学習が印象的であった。机上の学習に終わるのではなく、児童が体験的な学習活動に取り組み、五感を通した理解を促している。翌日は、山ノ内西小学校のESD研修会に参加した。西小学校でも全学年の取組を紹介していただいたが、印象的だったのが、5年生の耕作放棄地での稲作体験だ。学校近くの耕作放棄地を借り受け、田起こし、代かき、田植え、水の管理、雑草対策、稲刈りなど、稲作を丸ごと、機械を使うことなく自分たちの力でやり遂げ、収穫していた。毎日口にするお米を育てる苦労や自然環境に即した暮らし・仕事など、ここでの学びが子どもたちの生涯に関わるものになっていると感じた。
2.奈良学園小学校ESD研修会
昨年度、各学年の宿泊学習を中心としたカリキュラムマネジメントとして、学年のストーリーマップを作成された。それを受け今年度は、実際に授業レベルにおいて、「ESDを核とした授業展開をどのように進めていけばよいか」について校内研修を持たれ、講師として参加した。ESDの授業づくりについて、特に「問い」を中心とした単元展開について、ワークショップを交えながらの研修会であった。研修会後、授業づくりに興味を持たれた3名の教員が月1回の「奈良ESD連続セミナー」に参加し、ESDの授業づくりについて意欲的に学んでおられる。
3.草津市立玉川子ども園の園内研修会
今年もキャンディデート校である玉川子ども園の園内研修会に2回参加した。年少・年中・年長とそれぞれのクラスで、地域を教材化して取り組まれていた。その中でも年長児の「野路の赤土」を用いた保育活動には感心した。まず、保育者が鉄分を含んでサツマイモ栽培以外には使えない固い土を「地域特有のものとしてクリティカルに捉えなおした。そして野路の赤土を子どもと保育者が地域に出向いて採取し、金づちなどで砕き、ふるいをかけることで「赤土粘土」に変身させた。これだけの手間をかけた効果だろうか、子どもたちは試行錯誤しながら水を加えて、粘土遊びに適した状態を作り上げている。その後、友達や保育者と盛んに交流しながら粘土遊びを続けている。泥団子作りから足で平らな粘土作りへ、そしてだんだんと立体的な作品作りに進んでいく様子から、子どもの発達を感じさせられた。動植物だけでなく、「土」も地域教材化できることを教えていただいた。

ESD活動紹介
1.2024年度近畿ESDコンソーシアム成果発表会・実践交流会
1月12日・13日にハイブリッド方式で成果発表会・実践交流会を開催し、300名以上の参加者を得ることができた。12日のESD子どもフォーラムでは、福岡市立小呂小学校・草津市立老神中学校・白浜町立白浜中学校・天理市立福住中学校の児童・生徒が、日ごろのESDの取組を紹介した。本学ユネスコクラブ員の司会進行のもと、附属中学校生徒も交えて、意見や感想の交流を行った。大学で多くの人の前で発表したことは、彼らの活動意欲の向上につながったものと思う。第2部は、各地のESD実践者による実践交流会である。2日間で23本の実践報告が行われ、互いに学びあう機会となった。また、国立大学法人奈良国立大学機構理事長の榊裕之氏から、「学び、究め、創り出す力を育む‐持続可能な世界を築くために」のご講演をいただいた。榊氏はリベラルアーツの重要性を述べられたが、多くの教科・領域を横断的に学ぶESDは正に、これからのリベラルアーツであると感じた。

2.関西歴史文化首都フォーラムでの知事との対談
関西歴史文化首都フォーラムの奈良フォーラムが5月16日にバスターミナルレクチャーホールで開催された。その第3セッション「はじまりの奈良 ~未来への提言~」では、本学ユネスコクラブの3名が登壇し、奈良県の山下知事と対談した。県民にとって、当たり前すぎる景観を、ESDの視点で捉えなおし、その価値を世界に向けて発信する方策を提案した。ESDを学ぶ大学生や高校生が、1300年続いている街としての奈良を紹介し、そこでの見方を伝える動画の作成することで、まず、県民の意識を変革する。また、外国人観光客には、若者による詩吟を体験的なプログラムとして紹介する。視覚だけでなく聴覚にも訴えることで感動体験を提供し、持続可能な社会の実現に向かって協力体制を奈良から作り上げようという提案に、知事も観客も終始笑顔で受け止めていただけた。