- とんだばやししりつとんだばやしようちえん
-
富田林市立富田林幼稚園
- Tondabayashi Municipal Tondabayashi Kindergarten
- 種別幼稚園または幼保連携型認定こども園 地区近畿地区
- 主な活動分野生物多様性, 環境, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 食育
所在地 | 〒584-0032 大阪府富田林市常盤町15の1 |
---|---|
電話番号 | 0721-24-3301 |
ホームページ | https://www.city.tondabayashi.lg.jp/site/tondabayashiyoutien/ |
加盟年 | 2025 |
2024年度活動報告
生物多様性, 気候変動, 環境, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 平和, 人権, ジェンダー平等, 健康, 食育, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)
本園は、ユネスコ憲章に掲げられた、平和、人権、尊重、文化などの国際社会の平和の文化構築のための重要な要素を積極的に取り入れ、幼児期より「人としていきる(Learning to be)」 ために 「心ゆたかにたくましく生きるこどもの育成」を教育目標に掲げた。特に子どもの自発性や興味・関心を尊重した生活を基盤にしながら、遊びを通した相互の尊重を育み、学びの創造と充実をめざしている。また、ユネスコスクールの活動は、遊びを通した学びの実践と捉え、活動を通して幼児期に育みたい資質・能力を育成することを目標とし、それらは、地域文化の継承と創造・健康な生活と体づくり・自然とのかかわり・聞くこと話すことの4つの柱を中心に活動が構成されている。
1.自然物との関わり・聞くこと話すことに関わる活動
【環境教育・生物多様性・気候変動】
⓵幼稚園里山計画
園内にビオトープが完成し、4年目となった。園内に池をつくる様子を知っている子どもは誰もいなくなり、池への思いを継続していくために園内の環境を見直し、昨年度末には池の横にあった物置小屋を遊べる家へと改築した。子どもたちは“おうちごっこ”を楽しみながら自然と池や周りの環境に興味をもつようになった。そして池の周りの環境も少しずつ変化し、今までは見られなかったヘビイチゴやツユクサが自生するようになった。また、今まで産卵期しか池に現れなかった「アカガエル」も何度も姿を見せるようになり、子どもたちは「アカガエルさん、この辺で遊んでるんやな」「いつもこの草のところで寝てるのかなあ」など思いを寄せるようになった。そこで池の横の花壇を“もっとアカガエルがくらしやすい場所=里山”に変身させよう!ということになり、2年前にも出かけた富田林市錦織地区にある「奥の谷 里山」に出かけることになった。
当日は小雨模様であったが、晴天時と雨天時の里山の様子の違いも子どもたちに体験してもおうと決行する。里山では、園の池にいるメダカやアカガエルの故郷である里山の風景に心躍らせる子どもたちの様子があった。里山の池の様子を見た子どもたちは「水が濁っているね。」「オタマジャクシは元気でいるのかな?」と雨天時の池の様子を肌で感じ、生き物たちを案じる言葉が聞かれた。里山を管理されている「自然を守る会」の方に園内の様子を事前に見に来ていただき、園庭に移植できる植物を分けてもらえることになっていた。植物を見つけるごとに名前や特徴、育てるための注意点などを教えていただき、バケツに分けてもらうことができた。園で一つ一つ振り返りながら移植し「アカガエルさん喜ぶかなあ」と期待がふくらんだ。子どもたちも植物の名前を忘れないうちに写生をしたり、池を再現してアカガエルを探す遊びをつくって楽しんだりすることができた。活動する中で植物にも“在来種”や“外来種”があることを知り、本来、地域に生息すべき植物があることや、植物が変化することで、少しずつ池にやってくる生き物の環境も変化していることに気付くことができた。
⓶人形劇遊び ~カラスは悪者!?~
本園では、園舎の裏にある畑での栽培活動と並行して、親子栽培活動として年に2回個人持ちの植木鉢で野菜を育てている。5月に植えたミニトマトやキュウリがだんだん生長してきた頃、登園後に子どもたちがボロボロになったキュウリや枝から落とされたミニトマトを見つけた。「なんで!」「誰かが食べたんちゃう?」と大騒ぎになった。最近よく園舎の周りにいるカラスの仕業に違いないと考えた5歳児はこれ以上野菜を食べられないように対策を考えた。シートで野菜を覆う、袋をかぶせる、など色々な意見が出たが、自分たちも近所の田んぼで見たことがある“大きな目玉”や“大きな鳥”などのいわゆる鳥のおどしをつくることになった。ポリ袋などをつかっておどしをつくり、反射する素材のテープなどと共に野菜の周りにぶら下げることで被害は少し抑えることができた。その経験をもとにカラスが野菜をとっていくクレーンゲームをつくって遊んでいたのだが、その過程で「カラスもお腹空いてたんかもしれへん」という声が聞かれた。今年は猛暑で野菜の生長もよくなかった。人間だけでなく、生き物にとっても厳しい季節であったと考えられる。そのつぶやきは子どもにとっても“カラスのくらし”について考えるきっかけとなった。
秋になり園生活の中で出会った生き物たちを題材にした人形劇をつくることになった。「幼稚園にやってくる鳥(ハトやカラス)の話」「アカガエルの話」「アオスジアゲハの幼虫の話」の3つの話ができあがった。ストーリーは子どもたちで考えたのだが「幼稚園にやってくる鳥の話」ではカラスが幼稚園の野菜を食べてしまったエピソードにカラスは卵を産んで育てている最中だった、というフィクションを付け加えていた。「野菜食べられたけど、カラスもお腹すいてたんちゃう?」「(野菜を食べたのは)カラスのお母さんやったかもしれへん」という会話が聞かれ、夏の実体験から“カラスにはカラスのくらしがあったのでは?”という思いにつながったのだと思う。その後11月には本当に園庭の木の上でキジバトが卵を産み、育てる様子を観察する機会に恵まれ、身近な世界にも生き物が多く存在し、命が循環していることを実感することができた。
子どもたちが園生活で様々な動植物に出会い、飼育したり生長を観察したり共に生活をする中で様々な興味や気付きがある。それらと丁寧に向き合い、伝え合いを継続することで子ども自身が想像力を広げ、考え、学び合おうとする姿につながっていく。持続可能な社会の創り手となる気付きが増えるよう教師もその感覚を磨きながら、今後も子どもたちの気付きを広げ、豊かな学びにつなげ、深められるよう子どもと共に展開していきたいと考える。
2.地域文化の継承と創造・健康な生活と体作りに関わる活動
「みいつけた!寺内町」
今年度は昨年度の課題となっていた活動内容を練り直し、国の重要文化財を管理されている方々と共に年間計画を立て、それを基に活動を進めてきた。寺内町の成り立ちを知り、何度も散策を重ねることで子どもたちがより興味を深め、自分たちの町に親しみを感じる姿が見られるようになってきている。1学期にはペーパークラフトで町屋を制作し、実際の寺内町の地図上に並べ、町の様子を再現することができた。地域の行事「じないまち燈路」の作品を見ていただく時に一緒に展示することで、園の活動を保護者や地域の方にも広く知っていただく機会となった。2学期には寺内町の発展における重要な役割を担ってきた「興正寺別院」の中に初めて入れていただくことができ、建物やご本尊の厳かな雰囲気や代々受け継がれてきた歴史を実感することができた。実体験でしか味わうことができない“初めての出会い”の一つ一つを大事にし、この地域の方々の思いを感じる活動をこれからも大切にしていきたい。
以上、ESDに合致する学びがあった。今後もUNESCOの精神をもち続けながら幼児教育を進めていきたい。
来年度の活動計画
【来年度に向けて】
・来年度はビオトープが完成して5年目となり、さらに池の周りの環境に変化が見られることが予想される。ビオトープの定着により園にやってくる昆虫や鳥などの変容に子どもと共に目を向け、子ども発の気付きを増やし深い学びにつなげていきたい。
・富田林寺内町との活動を継続し、学んだことや体験させていただいたことを幼稚園の生活にいかしていくことができるようにする。(綿栽培の体験から)
・近隣のユネスコスクールとも連携して本園ならではの実践を深めていきたい。