• せいしんちゅうがっこう・せいしんじょしこうとうがっこう
  • 清心中学校・清心女子高等学校

  • Seishin Junior High School / Seishin Girls' High School
  • 種別 地区
  • 主な活動分野生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 貧困

所在地 〒701-0195 岡山県倉敷市二子1200
電話番号 086-462-1661
ホームページ http://www.nd-seishin.ac.jp/
加盟年 2012

2024年度活動報告

活動分野

生物多様性, 気候変動, 環境, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 貧困

 本校は「心を清くし 愛の人であれ」という校訓のもと、感謝と奉仕の心を持って誰かを想って行動することを学園理念としている。特にこの学園理念は、ESDの理念にも通ずると捉えている。またESDの実践を通して、自立した女性としてグローバル・リーダーとなるための資質能力を育むことを主な目標としている。
 具体的には、ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野 (①地球市民および平和と非暴力の文化、②持続可能な開発および持続可能なライフスタイル、③異文化学習および文化の多様性と文化遺産の尊重) を念頭に置きながら、中高一貫校であること、SSH (Super Science Highschool) であること、学校全体で探究活動を行っていることを柱とし、以下の内容に取り組んだ。

● 探究活動や学校行事の中で、中高一貫校の6年教育を活かしながら、①に関連する「人権・難民・平和に関する活動」を行った。

A:6月20日の「世界難民の日」にちなんだ取り組み
 世界難民の日が定められている6月に高校2年生の「公共」の授業内で、「難民の定義」「難民を生み出す原因」「世界の難民情勢」について学び、実際に難民を体験するワークショップや日本の難民受け入れについて考える授業を行った。
 高校3年生の「公民演習」の授業では、同じく6月に高校2年生が取り組んだ内容と、実際に日本に住んでいる難民が直面している問題から、日本の難民受け入れの在り方について考えた。その後学年全体で映画『マイスモールランド』を鑑賞し、難民支援団体TRYの講演やワークショップを通して難民問題や外国人労働者の受け入れについて考えを深めた。また7月25日には、国連UNHCR協会芳島昭一氏による講義を受講した。世界の難民情勢や難民キャンプの様子、UNHCRの取り組みをお話しいただき、難民支援団体SOARの方に国連UNHCR協会が作成した教材である「いのちの持ち物けんさ」を用いたワークショップを実施した。
 さらに今年度ユネスコ部は、生徒考案で「難民支援」を活動の柱とし、ユニクロとUNHCRがタイアップして実施している「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」に応募し、実践校として選出された。6月18日に(株)ユニクロ倉敷平田店の方に難民に関する授業を行っていただき、11月末まで難民に届ける子ども服の古着を回収した。清心祭(本校文化祭)を中心に学校内で段ボール15箱分、11月17日にアリオ倉敷で5箱分の合計20箱分を回収し、世界の難民の元に届けた。さらに子ども服の回収だけでなく、難民支援のための募金活動も並行して行なった。9月7, 8日に開催された清心祭では、ユネスコ部員が難民問題について来場者に発表して募金活動を行い、そこで集まった募金は国連UNHCR協会に全額寄付した。

B:内閣府 国際平和協力研究員 中野実緒氏による講演
 10月28日に行われた高校3年生の「公民演習」の授業では、内閣府 国際平和協力研究員の中野実緒氏による、「ジェンダーと平和構築 ~女性が平和に関わるとき~」と題して講演を実施した。中野氏の実体験も交えつつ、世界の平和のために女性だからこそできることを話してくださった。難民キャンプでの女性が受ける被害や女性や子どもに対する暴力などの現状を知ることで、生徒も一人の女性として平和活動に取り組む意義について考えることができた。

C:全校生徒で取り組むカトリック行事
 6月にある「聖ジュリーの日」では学園の創始者であるSt. Julie Billiartの精神を受け継ぎ、他者への感謝と信頼の心を忘れず、愛と奉仕の心をもって全校生徒で活動した。中学1年生と高校1年生は学年を越えて合同で活動し、創立者の生涯を描く紙芝居作成や手話体験をしたり、本校が全校生徒で約40年間支援している「チャイルドファンドジャパン」の講話を聞いたりした。中学2年生と高校2年生はクラスごとに社会福祉施設や高齢者施設、障がい者施設を訪問し、奉仕活動後利用者の方々と生徒考案のレクリエーションを行った。中学3年生は車椅子体験や高齢者疑似体験などから、差別や偏見のない社会について考えを深めた。また、11月下旬からクリスマスまでを「待降節の期間」とし、路上生活者や障がい者を支援する施設に、手編みのマフラーとクリスマスカードを作成したり、食料や衣料品などの献品や献金を全校生徒で行ったりした。これらの活動を通じて、生徒らは誰かの立場になって考え、他者を想う心を育んだ。
 さらに今年はナミュール・ノートルダム修道女会日本宣教100周年であることから、海外からシスターが3名来校され、修道会としての繋がりや世界における教育の在り方などの講話を聞いた。学園の歴史を感じると共に、現在の世界との繋がりや教育に関する現状を聞いた生徒らは、平和や教育について改めて考えを深める契機となった。

● 本校の柱である探究活動に必要な基盤を育成する教育プログラムを開発し、またその探究プロセスを実践しながら、②に関連する「社会・地域連携活動」を行った。

D:持続可能な社会を考える探究活動の枠組み
 本校では、中学1年生は生徒らにとって身近な課題に挑戦する中で探究の基礎を学び、中学2年生で地域や世界に目を向けながら課題発見をし、中学3年生では生徒自身で課題設定をして主体的に探究を進めている。高校入学後は外部機関や大学等と連携しながらより専門性を高めつつ、自身の探究を深められるように注力している。特に高校1年生に開講されている「SS課題探究基礎」では、探究に必要な「読む・書く・分析する・まとめる力」を1年かけて育み、探究で必要とされる基礎的な力だけでなく、さまざまな場面で活きる「自分で考える力」の育成も行った。さらに高校2年生では学年全生徒が発展探究を履修し、それまでに培ってきた力を活かしながら、それぞれが設定した課題に取り組んだ。研究テーマは植物や酵母、動物実験代替法などの理系研究から、地域医療や地域活性化、中国と日本の英語教育などの文系研究まで多岐に渡っている。その成果を様々な大会やコンクール等で発表することで、より研究を深めるきっかけになったり、英語をツールとして使うことで実践的な英語を学ぶことができたり、総合的な力を養うことができた。

E:持続可能な社会を考える取り組み
 探究的な学びを発展させ、高校1年生と2年生が「第5回SB(サステナブル・ブランド)Student Ambassador 中国大会」に参加した。基調講演やパネルディスカッション後は他校生徒と共に、マツダ株式会社と株式会社エフピコから提供された「SDGsから環境保全や地域課題解決への貢献を考える」というテーマから、具体策を考えて発表した。
 また研修旅行でアイヌ民族について学んだ高校2年生が、「ウアイヌコㇿ会議」に参加した。多様な価値観を認め合い生き生きと暮らせる社会を実現するために、ウポポイと道内外の企業の取り組みを参考に議論し、高校生がそれぞれの役割について考えた。

F:自然体験教室
 毎月本校で開催されている竹ワークショップでは、本校生徒もボランティアとして参加しながら、参加してくれた小学生や未就学児と里山の竹を活用して竹炭作りや竹の食器作り、竹水採取などを行っている。活動を通して竹の効能や里山の在り方、環境保全等を考えるきっかけになっている。また毎年開催している本校主催の「理界村」では、高校2年生の生徒自ら実験ブースを考案して運営をしたり、ボランティアスタッフを募って企画全体のスタッフの動きや事前会議も生徒たちで進めたりした。

● 校内外で③に関連する、海外研修や文化遺産尊重に向けた取り組みを実施した。
G:海外研修
 本校には中学3年生対象のオーストラリア研修、高校1年生生命科学コース対象の生物多様性がテーマのフィリピン研修、高校2年生希望者対象の格差社会に対する理解を深め、毎月チャイルドファンドジャパンを通して支援している子どもたちの現状を学ぶフィリピン研修旅行、高校1年生と2年生対象のサンノゼ研修とオーストラリア研修の合計5つの海外研修旅行がある。いずれの研修も、現地活動や国際交流を通して文化や生物の多様性や、文化遺産の尊重について考えを深めるきっかけになっている。例えば中学3年生対象のオーストラリア研修では、ホームステイや現地の学校で受講する授業を通して体験する文化交流はもちろん、通常授業の中で学んできた生物多様性や先住民族について実際に自分の目で見ることで、より身近な話題として考えを深めることができた。またサンノゼ研修では「女性学」をテーマに、研修や姉妹校であるノートルダムサンノゼ高校で現地の生徒らと共に受講する。さらにGoogle本社のような世界企業の訪問を通して、生徒がキャリア形成について考える契機になるようなプログラムを作成している。帰国後、生徒は授業内や課外活動で学んだことを活かして現地活動や授業に参加し、それぞれの探究や研究に繋げている。

H:ユネスコ「プロジェクト未来遺産」に関する取り組み
 ある高校2年生の探究では、高梁市宇治地域を通る「備中とと道」周辺の耕作放棄地に太陽光発電所の建設が進み、景観が損なわれている点を課題とし、地域住民の方と耕作放棄地の利用について考察した。別の探究班は、倉敷市美観地区の町家の活用や町並みや景観保全について考察した。その際、2011年にUNESCO総会で採択された「歴史的都市景観に関する勧告」およびHUL(HISTORIC URABAN LANDOSCAPE)を参考にした。
 また同様のテーマで中学1年生対象に、美観地区フィールドワークを実施した。普段は「観光地」としてみている美観地区を、「市民が住むまち」として現在の課題を様々な視点で気づき、実際にどのようなことが自分たちにできるかを考えた。フィールドワークに先立って、12月11日にNPO法人倉敷町家トラストの代表理事の方にご来校いただき、美観地区およびその周辺の現状と行われている取り組みについて話していただいた。時代の変化と共に変化したまちの現状を歴史の長い店舗や旅館、商店街で商いをされている方、美観地区中心部に住んでいらっしゃる方など、多様な立場の方々のもとを訪れ生徒が直接インタビューする中で、今後の美観地区周辺の在り方を考えることができた。

上記のような通常授業や学校行事、研修の中で、探究の枠組みを経験しながら基本的な知識を習得しつつ、多角的に物事を見る力を養うことができた。このような機会で得たことを、岡山県ユネスコスクール実践交流会の実践発表内でも生徒のことばで同じネットワークの高校生に向けて伝えることで、思考力と発信力を高める活動になった。

来年度の活動計画

 今年度は社会や理科、英語の授業を中心に、持続可能な社会づくりのヒントになり得る基礎知識を習得させながら、探究プロセスを学ぶサイクルを意識した授業を展開することができた。目標やテーマ、課題を明確にすることで、生徒にとっては机上の学びが実践的な場面でも結び付きやすかったのではないだろうか。
 一方で探究活動は、それまでの活動を継続しながら深化させていかなければならない。引き続き授業では知識の習得も大切にしつつ、どのように生徒らの関心のあるテーマを深めていくか検討を重ねる必要がある。関係部署や教員だけでなく、全教職員でユネスコの理念を再確認すると共に、中高一貫校の特色である「6年教育」を活かしながら新しい教育開発に注力したい。

過去の活動報告