所在地 〒192-0919 東京都八王子市七国3-50-2
電話番号 042-632-8188
ホームページ https://www.tokyo-yurikago.ed.jp/
加盟年 2018

2024年度活動報告

活動分野

生物多様性, 気候変動, 環境, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 持続可能な生産と消費, 食育

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びに繋げていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置づけ、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標としている。これらは全体的な計画、教育課程、年間・月間指導計画などによって位置づけられ、「環境を通した教育」及び「主体的、対話的で深い学び」への具体的実践として行われている。
2024年度は、これまでの活動を基礎に更に充実すると共に、国際理解分野への発展がみられた。本園にて日常の遊びや生活、活動を通してシームレスに行われるESDへの取り組みのうち、以下7項目について報告する。

稲作、畑作 (分野:食育、環境、地域の文化財、持続可能な生産と消費)
里山再生・子どもの森づくり (環境、生物多様性、気候変動、持続可能な生産と消費)
ムササビ等の野生動物の観察活動 (分野:生物多様性、環境、国際理解)
養蚕 (分野:環境、地域の文化財、文化多様性、持続可能な生産と消費)
陶芸 (分野:環境、地域の文化財、文化多様性、持続可能な生産と消費)
ゴミと資源 (分野:環境、生物多様性、気候変動、持続可能な生産と消費)
国際交流 (分野:国際理解、文化多様性)

 

①稲作、畑作
・園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てる中で、土作りから園児が主体的に関わった。コンポストには、給食の野菜くず、稲作で生じた籾殻や米糠、飼育ヤギの糞、野ウサギの糞、近隣牧場の牛糞などが加わり熟成され、また園内「里山林」の落ち葉は「葉っぱのプール」に集められ、落ち葉遊びを経て腐葉土となる。これらを堆肥として田畑にすき込み、園児と共に土壌を作った。

・畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水し、毎日世話をして育てた野菜、小麦を収穫し、調理保育や給食の材料となった。残った野菜くずは畑の肥やしとなり、食の循環について体験を通して学んだ。

・年長は園庭の棚田で8ヶ月をかけて稲作を行う。1から10までできるだけ園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水流し物事を成すことの大切さを知る。

・田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を子ども達と行った。堆積したヘドロを取り除き、その中から様々な水棲生物を救出して戻したり、小川でゲンジボタルの生育を促すため、年長が陶芸粘土の型に使用した石を小川沿いに敷き詰め、コケの生育を促したりすることによって、持続可能なビオトープ環境の維持に努めた。更に日々の生き物採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学んだ。

・脱穀、籾すり、精米作業は、千歯扱き、唐箕、回転足踏み脱穀機などの古農具を使用したり、弥生時代から行われている手作業で行うなど、幼児にとってしくみが理解しやすい原始的手法に特化し、日本古来の稲作について体験を通して知った。

・環境整備や里山保全を行う保護者有志の会「鉄腕クラブ」では、上記の稲作を家族で経験し、田植えから収穫までの感動を家族で味わうことが出来た。「秋祭り」を開催し、全学年と小学生の親子も脱穀を経験することができた。

 

 

子どもの森づくり(里山再生)
・周囲の里山林が持続可能であるために、園内外のコナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭や周囲の緑地帯の各所に「ドングリ畑」を作って育てた。2022年度から全国的に流行しているナラ枯れの影響により、本園の里山林「森の広場」において、樹齢50年規模のクヌギやコナラを数本伐採せざるを得ない状況となった。しかし、これまで毎年行ってきたドングリ播種によって、結果として樹木の世代交代を持続可能な形で行うことができ、活動の重要性、必要性を改めて実感することになった。また、園に繋がる八王子市所有の里山を再生するため、八王子市と相談し、萌芽更新が行われた。切り出した原木を使用して、園の環境整備、遊具作りを継続的に行った。

・東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を東北に送り植樹してもらった。送り状、礼状等のやりとりにより、心の触れあいも見られた。

・園児が、ドングリの栽培から木に育ち森林に繋がることをわかりやすく理解できるよう、NPO法人子どもの森づくりネットワーク並びに日本郵政の協力を得て、紙芝居を作成した。また同様の森作り活動を行っている全国の園に配布された。園児も話に親しみ、その後行っているドングリ栽培への繋がりが大変円滑になった。さらに創立50周年を記念し、絵本2000部を作成し、在園児、卒園児、地域団体、関連企業に配布した。

 

ムササビ等の野生動物の観察活動
今年度も年長の活動として、園庭の森の広場に棲息するムササビの観察と環境作りを行ってきた。また、園児の野生動物への興味が広がったため、2023年度にNHK「ダーウィンが来た」の協力により動物用のトレイルカメラを園内に複数設置し、深夜にノウサギ、タヌキ、キツネ、アナグマ、テンが来ていることが確認された。2024年度も継続的な観察が行われ、年長が栽培しているアイの畑が動物に荒らされたため、園児がカメラで確認したり、畑を守るために園児が間伐材で木の精を作って守るなどして、主体的な関わりが見られた。

・冬の間にムササビの餌が少なくなるため、ドングリ餌台を新たに作り、拾ったドングリを定期的に置いた。

・これまで約7年間に渡るムササビとの関わりを、今後も子どもたちに伝えていけるよう、創立50周年を記念し、絵本を2000部作成し、園児、卒園生、地域の団体、関係企業などに配布した。

・2022年度より、NHK、八王子市、町田市、ムササビ専門家、中央大学附属中学・高等学校生物部の協力を得て、園内の森だけで無く、隣接の46haの七国相原特別緑地保全地区の森にも巣箱やカメラを設置し、森全体に棲むムササビの数や生態について継続的に調査を行っている。2024年度も年長園児は森の中のムササビが棲んでいそうな場所を散策し、樹洞を探すなどして観察した。

・園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境を自分事として捉え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」や、「持続可能な社会の担い手としての価値判断に繋がる姿勢」が育っていく様子が確認できた。

・全国学校園庭ビオトープコンクールでムササビとの関わりについて発表し、ドイツ大使館賞を受賞したが、これに関連し、八王子市長、文部科学大臣副大臣並びに文部科学省初等中等教育局の方々にご来園いただき、環境をご覧いただくと共に園児との交流を図った。

 

養蚕
例年同様、全学年で蚕を育て、年中児が繭から座繰り器で糸を取り、また繭を使った制作を行い、横浜シルク博物館にて展示された。「織物の町」である八王子市の歴史・文化に触れ、蚕を通して生き物への愛着を深め、慈しみの気持ちを育むと共に、命を頂きながら私達の生活に欠かせない衣類や生活用品が作られていることを一連の体験を通して知り、感謝の気持ちを持つことができた。

    

 

 

陶芸
園の周辺地域一帯は、古代の窯の出土数が国内一であり、良質の粘土が採れるため、例年、園庭の土を掘り起こし、年長が地層を観察しながら粘土として使えそうな土を採取している。そして、これを細かく砕き、川石を型にして皿の形に成形、焚き火にかけ焼成している。こうした陶芸皿作りの活動に、より主体的に楽しく関わることができるよう、普段から楽しんでいる泥団子作りの遊びに十分な時間をとり、土の魅力を感じられるようにした。このよに、遊びと体験を通して主体的に関わる中で、古の文化に触れながら、想像力、創造力を育むことができた。

 

 

⑥ゴミと資源
身近なゴミの行方を理解し、その減量と資源活用に資するため、年中が市内清掃事業所を訪問し、幼稚園、小学校向けのプログラムを体験した。事後活動として、ゴミ捨て禁止のポスターを作り、園周辺の森や歩道に設置した。特に野生動物を身近に感じることのできる本園では、「野生動物が棲みやすい森を維持するには」という視点が園児にとって理解しやすく、取り組みが促進された。

 

⑦国際交流
・日々の遊びや活動を通して、海外の文化や表現に触れることができるよう、海外の非常勤スタッフが自然の中での遊びや体験に参加している。これまでアメリカ人のスタッフのみであったが、2024年度よりスウェーデン人のスタッフが加わり、いわゆる英語教育とは異なり、文化と表現に親しむことに重きをおいた援助を行っている。

・ACCUによるサポートの下、文部科学省「初等中等教職員国際交流事業」として、インドの先生方や教育関係者が来園され、園児、教職員との交流を行った。園児が本場のヨガを教えていただいたり、園の稲作脱穀をインドの方々に体験していただくなど、濃密な文化的交流を行うことができた。また、この交流をきっかけに、園児がインドに興味を持ち、インドの方とZOOMで繋いでインドの食文化を教えていただくなど、継続的にインドへの興味、関心を深めていくことができた。

 

   

来年度の活動計画

・これまでの活動を継続、発展させていく。特にこれらの活動については、自然や生き物を対象としているため、興味関心が年々深まり、園児の「学びに向かう姿勢」が更に促進されるよう、日々の遊びから体験活動への主体的な関わりを基本としながらも、地域や専門的な立場の方に定期的にお越しいただき、指導、サポートしていただけるようにする。
・ユネスコスクールを中心に、国内外の幼稚園、学校等と積極的な連携を深め、教職員のESDに対する理解促進、保育の質の向上、園児の交流を図る。
・各活動の評価についてはエピソード記録分析や保護者への質問紙調査や、OMEP日本委員会の評価スケールを利用したESD評価を行っていく。
・ユネスコスクールとしてのESD活動の周知については、引き続き、ホームページのユネスコスクール専用ページやSNSなどでも発信を行っていく。

過去の活動報告